ぶっつけ本番はダメ!~オンラインミーティングでしくじらない5つのポイント~(第5回)

デジタル化

 前回に引き続き、オンラインミーティングの話題をお届けします。今回は、主にビジネスパーソン向けの話題が多いですが、未来のビジネスパーソンである就職活動中の学生の皆さんにも使えそうな知恵をご紹介いたします。本記事は今回で最終回となります。

5.いよいよ本番!

 事前に気を付けるべきことをクリアしたら、第1回でも述べた通り、あとは「場数を踏む」しかありません。原則としてのマナーは、フェイス・トゥ・フェイスであっても、オンラインミーティングであっても同じです。しかし、オンラインミーティングにはオンラインミーティング特有のマナーがあるので、いつも心にとめておきましょう。

 あまり、甘えの心を持つことは良くはないと思いますが、オンラインミーティング自体がまだ世の中全体の中でこなれているわけではなく、少々のトラブルならばおとがめなしのことも多いので、変に委縮せず、自信をもっていきましょう。一方で、もし何かしらのミスをしてしまった場合は、そのままにせず「次は繰り返さない!」という気持ちが大切です。

ミュートの状態に気を付けよう

 「自身の発言タイミング以外は、ミュートをONにする」これは、オンラインミーティングに不慣れな方が忘れがちですが、慣れてきても時々忘れてしまう、重要なマナーです。ミュートがOFFとなっていると、本人は静かにしているつもりでも、意外と周囲の音は聞こえてしまっているものです。会議そのものに迷惑をかけるだけでなく、こちらのさらしたくない情報がさらされてしまうリスクもあるでしょう。お菓子をぼりぼりと食べている音や、鼻をかむ音、ワイヤレスヘッドホンであれば、うっかりそのままトイレにいってしまったりしては、目も当てられません。テレワークであれば、奥様(旦那様)とのやり取りが筒抜けになってしまったりすると、「この人、会社では丁寧な言葉遣いだけど、家族には乱暴な言葉遣いだな…」ということがばれてしまうかもしれません。(それはそれで、別な問題がありそうですが…。)

 逆に、自身が発言するタイミングでミュートを解除するのを忘れて、長々としゃべった挙句に、誰にも聞こえていなかったなどというミスもありがちです。熱弁をふるった後に「いまのお話、1分くらい前から聞こえていませんでしたよ…」というようなことになると、参加者全員の時間を無駄にしてしまうことはもちろんのこと、話した本人も、「またあの熱弁を繰り返さなければいけないのか…」と、徒労に感じることになるでしょう。

 これに関しては、「話すときはミュートOFF、話をやめたときはミュートON」を、脊髄反射的にできるようになるまで訓練するしかないでしょう。逆に、他者ができていない場合は、その場でチャットなどで、本人だけにそっと指摘してあげるのが優しさと言えるかもしれません。

一度に一人で長々としゃべりすぎない

 前項目にも通じるところがありますが、一人が一度に長々としゃべり続ける状況では、何かしらのトラブルがあった場合に、「誰にも聞こえていなかったので、もう一度」ということが生じやすくなります。特に、パワーポイントの画面を共有し、誰か一人が全員に対してプレゼンテーションをするような場面で起こりがちと思います

 フェイス・トゥ・フェイスのプレゼンテーションであっても、良いプレゼンターは、「聴衆の雰囲気を察して、トーンを変えたり、時々聴衆に質問を投げかけたりして注意をひく」ようなテクニックを使うといわれています。これに関しては、聴衆の雰囲気を察しにくいオンラインミーティングでは、一層重要なテクニックと思われます。もし、全員の映像が見えるオンラインミーティングであれば、時々全員の表情を見てみたり、「ここまでのことで、何か質問はありませんか?」の投げかけを、フェイス・トゥ・フェイスのとき以上に高頻度にした方が良いのではないかと思います

発言者・発言の相手を明確にしよう、リアクションを返そう

 これは、自身の発言に気を付けて、メンバーに迷惑をかけないようにしようという気持ちの裏返しになるかもしれませんが、ミーティング内で、不特定のメンバーに対し質問を投げかけても、反応がないことがあります。例えば、不特定多数に「〇〇って××でしたっけ…?」と質問したとして、聞き手が「誰が答えても良いような回答だ」と判断した場合、「自分でなくても、誰かが答えるだろう」とか、「もし、自分のほかに誰かが同時に回答したら、声が被ってしまい聞こえないだろうな」などと、いろいろと察してしまうからです。

 フェイス・トゥ・フェイスのミーティングでは、目線やジェスチャーなどの非言語情報が豊富なため、その場の雰囲気で、適当なメンバーが回答することが多いですが、オンラインミーティングでは、言語情報に頼りがちとなるため、筆者の経験上、互いに察しすぎて、沈黙の時間が流れることが多くなり、無駄な時間が増えやすいと感じます

 このようなときは、ある程度、「〇〇って××でしたっけ…? △△さん」のように、回答を期待する人を特定して質問したほうが良いでしょう。一方、聞き手の方も、不特定多数への投げかけであっても、変に察することなく、積極的にリアクションしたほうがミーティングの流れは良くなると(筆者の経験上)思います

会話だけに夢中にならないようにしよう

  筆者はマルチタスク人間ではないので、これは自身に対する戒めでもありますが、音声の会話だけに集中しすぎると、チャットなどのほかの情報に無頓着になりがちです。特にミーティングの開催者・司会者に相当する人は、ちょっと大変ですが、多方面に気を配りましょう。例えば、司会進行のかたわらで、レコーディングのONを忘れないようにチェックし、議事録が必要ならば、議事録のメモとり、ミーティング中に、欠席等の連絡があればその対応、メンバーの遅刻によって後から入出許可のリクエストが来て、対応するというケースなどもあります。

 これらは、一人でこなすならば、「場数を踏み」訓練するしかないことではありますが、一人で同時にこなしきる作業数にも限界があるので、いっそ、複数人に作業を分担してもらうことも大切です。

内職は極力控えよう

 フェイス・トゥ・フェイスのミーティングの時は、会議室にノートPCを持ち込んで、会議そっちのけでパチパチ打っている人、時々いますよね? 部門長クラスの偉い方が、会社の業績などを部下に一方的に話すようなタイプのミーティングにはありがちです。確かに、自身の参加が強く求められていない会議においては、自身が抱えている高優先度のタスクに集中したい気持ちはわかるのですが、そのパチパチは、ちょっと迷惑です

 オンラインミーティングでは、映像・音声通信がなければ自身の姿が見られないし、音も聞こえないので、よくも悪くも、こうした「内職」がとてもやりやすくなったと思います。かくいう私も、急ぎのメールの返信をしたり、ワークフローシステムの決裁をすぐに次に回すべき時などには、「結果的に業務全体の効率が良くなるなら良いだろう…」とやってしまうことがあります。内職には賛否両論あると思いますが、筆者個人としては、時間や空間の縛りを緩和するのがデジタル化のメリットの一つと考えているので、ある程度は許容範囲かなと思っています。

 ただ、やりすぎには注意しましょう。積極的なディスカッションが求められているミーティングならば、発言しないのは失礼ですし、聞き漏らしも多くなりやすいです。また、カメラをONにしている場合は、終始うつむいていれば、「この人は、全然会議に集中していないな」と思われてしまいます。ミュートを忘れて、キーボードをパチパチ叩く音がメンバーに聞こえた時には、全員に白い目で見られるに違いありません。

 内職の話ついでに、筆者の妄想を語ってみます。オンラインミーティングが、今よりもっと普及してきたときには、内職が当たり前になるどころか、聖徳太子さながら2つ3つくらいのミーティングを掛け持ちするということが出てくるのではないかと思っています。ワンマン社長の会社だったら、すでにやっていそうですね。

家族の協力を得よう

 コロナ禍が蔓延し始めた昨年の今頃は、コロナ離婚などという言葉も言われたりしましたが、特に在宅勤務中にオンラインミーティングに参加するときには、一緒に住む家族とも、うまくスケジュールを合わせてやっていかなければ、たちまち家族仲が悪くなってしまうでしょう。「家計を支えているのは自分なのだから、自分のスケジュールが最優先で、家族が合わせるべきだ」などと横柄なことを考えてはいけません。ある程度の仕事内容のスケジュールを家族と共有して、協力を仰ぎましょう

 オンラインミーティングに関しては、最低限「〇時~〇時までは、打合せがあるので、静かにしておいてほしい」のように時間帯を決めておくと良いと思います。そうすれば、大抵の家族は協力してくれるでしょう。一方で、家族には家族のスケジュールがあるので、そこはうまく協調すべきでしょう。

 「旦那が、晩御飯時間になってもダラダラと残業をしていて困る…」という主婦の悲痛な声を聞いたことがあります。仕事にのめりこむこと自体は結構ですが、家族のスケジュールを乱すような働き方では、家族は迷惑するでしょう。在宅勤務は、普段見せられない、自身の一生懸命働く姿を家族に見せられるチャンスでもありますから、変なところで株を下げたくないものです

リモハラ・テクハラは厳禁!

 これは、ITに疎い人よりは、むしろ、得意な人の方が気を付けなければならないことかもしれません。最近は、〇〇ハラ…といった、ハラスメント行為の類型がたくさん出てきており、オンラインミーティングにまつわるハラスメントなども挙げられているので、要注意です。

 リモハラに関しては、検索サイトで調べると多数情報が得られるので、ここでは詳細を述べることはしませんが、基本的には、従来からあったパワハラやセクハラ、プライバシーの侵害などのハラスメント行為に、リモートという言葉をつけただけで、昔からあったことの言い直しにすぎません。リモートという不慣れな新しい人間同士の距離感への戸惑いや、浮足立った気持ちも現れるのかもしれませんが、こうしたハラスメント加害の気があるという自覚症状がある方は、気を引き締めた方が良いかもしれません

参考URL

「リモハラ」って何だ?、コロナ時代の新たな悩みの正体
新型コロナウイルス禍で、当たり前になりつつある在宅勤務。新たな課題となるのがリモート越しでのハラスメント、「リモハラ」だ。いったいどんなハラスメントなのか。

 テクハラに関しては、一見、スキルが足りない側の人に対して「仕事に必要なITスキルを身に着けていないから責められるのは自業自得だ!」のように思われてしまうことが多いかもしれません。確かに、必要なスキルを身に着けていれば、責められることがないのですが、ITスキルが十分にある側の人も、スキルが足りない側の人に「余計なひとこと」を添えていることが多々あるのではないかと思いました。最近、日経新聞の記事(有料記事)で挙げられていた例を引用して考えてみます。

無自覚の「テクハラ」、部下でも加害者に: 日本経済新聞 (nikkei.com)

「先輩、会議用のZoom設定くらい1人でできないんですか。こんな簡単な操作で手間取って、よくこれまで仕事してきましたね」

 いくら初歩的な操作がわからなかったといえども、後輩からこんな口の利き方をされたら、先輩としての面目は丸つぶれですし、ITの力量不足を多少諫める気持ちがあったにしても、後半の「こんな簡単な操作で手間取って、よくこれまで仕事してきましたね」というのは、明らかに余計なひとことであるように思います

 人間、ITスキルがなまじあると、その優越的な地位を濫用したくなったり、また、日ごろの恨みつらみを抱えている場合は、ここぞというチャンスに反撃したいという欲求にかられる人もいるかもしれません。しかし、その気持ちをぐっと抑えて、紳士・淑女的な態度で振る舞うことが大切です。今は、デジタル化の過渡期なので、ちょっとしたコツに気づける人と気づけない人で差が出ることはあるかもしれませんが、いずれ、差はなくなってくるでしょう。日常的に、あるいは幼少期に「君は、一言多いよね」といわれがちだった人は、無自覚でつい小言を添える癖があったりするので、要注意です

 ここまで、5回にわたりオンライン面接やオンラインミーティングで使えそうな知恵に関する記事を書いてきました。本記事をの内容を活用し、ぜひともオンライン面接での成功、オンラインミーティングの効率化等に役立てていただけたならば幸いです。

オンラインミーティング時に気を付けることチェックリスト

機器選定のポイント

デバイスの性能(PC/スマホ/タブレット)は十分か?
カメラの性能(速度・解像度)は十分か?(顔が正面から写るか?)
マイクの性能は十分か?(感度・指向性)
スピーカーの性能は十分か?
照明の性能は十分か?(明るさ・配置など)
通信速度を測定したか?十分な速度が出ているか?安定して接続できるか?
WiFi回線を確保したか?正しく設定されているか?

準備のポイント

デバイスは正しく認識されているか?
アプリケーション側からデバイスを正しく選択しているか?
マイクの感度は正しいか?(大きすぎない・小さすぎない)
スピーカーの音量は十分か?(大きすぎない・小さすぎない)
カメラの配置は正しいか?(顔が映る・明るすぎない・暗すぎない)
緊急時の連絡手段(電話・メール・チャット)を確認したか?

会議時のポイント

周りに騒音はないか?
会議室を確保したか?
周囲の整理・整頓・清掃は十分か?
PC内の整理・整頓は十分か?

その他

(在宅の場合)家族とスケジュール調整したか?
相手の居場所・プライバシーを不必要に詮索しない。
相手を責めるような発言をしない。
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