オンラインショッピングからデジタルマーケティングを考える。

デジタル化

ここからアプリで、中小機構に聞こう!

独立行政法人中小企業基盤整備機構が実施し、中小企業等のIT導入を促進する、「ここからアプリ」というITプラットフォーム事業がありますが、皆さんご存じでしょうか。

「ここからアプリ」のサイトでは、業種別推奨ツールの紹介や、ITツール導入事例、経営課題からデジタル化の手法を検索できるので、自社の課題の解決につながるビジネスアプリやITツールなどのデジタルサービスを探すことができます。

役に立つコンテンツはもちろんですが、経営者を戦国武将に例えてIT導入の事例を紹介した「乱世モード」なるものがある等と、運営側の意気込みと頑張りも伝わってきますので、皆さんもぜひ覗いてみてください。

中小機構に聞こう!中小機構キャンペーンサイト【戦国モード】
かの有名な名将たちが、ここ現代に?!激動の戦国時代を戦った名将たちのリーダーシップにはこの乱世を戦い抜くためのヒントが、きっと隠されている。

今回は「ここからアプリ」のサイトから、千葉県市原市で雛人形や五月人形を販売する株式会社鯉徳の導入事例を取り上げます。同社の、オンラインショッピングを自社ホームページに開設し売上を増加させた取り組みから、中小企業のデジタルマーケティングを考えていきます。

オンラインショッピングからデジタルマーケティングを考える。

課題解決への取り組み

当社の課題は、出生率の低下等の影響から実店舗だけでは売上の先細りが予想され、新規顧客や現在の対象エリア外の顧客を開拓することでした。

その様な状況で、社長の加藤さんは2016年に一念発起して、自社の強みをより押し出すため、自社サイト内でオンラインショップを立ち上げました。ご自身の試行錯誤と、専門家の支援の活用により、現在では順調にオンラインの売上を伸ばしています。

鯉徳の成功要因を、デジタルマーケティングの「デジタルデータ」、「オムニチャネル」、「プロモーション」の視点から考えたいと思います。

デジタルマーケティングについては、こちらのブログ記事も参考にしてください。

データの活用

加藤さんは、オンラインショップでは対面販売に比べ、より具体的な数値で分析できると語ります。当社は自社サイトにお客さんを呼び込むSEO対策に苦労しましたが、その過程も経てデータ活用が進んだと考えられます。

事例集に詳細は書かれていませんが、ホームページのアクセス情報から、「いつ、どの商品が、どれ位」売れているかに加え、「各商品の閲覧と購買数」、「ページ間やページ内でどの様な行動を取って購入に至っているか」等と、それらの「時系列の変化」も踏まえて、デジタル上の顧客行動を数値で把握していると推測できます。

数値で結果や変化を捉えられることにより、改善策の仮説を立て、行動して、その結果をまた分析するといったPDCA(Plan-Do-Check-Action)サイクルの精度や効果が高まります。

オムニチャネルの活用

当社の商品が日用品等とは異なり嗜好性の高いこともあって、オンラインショップで閲覧して購入するだけではなく、実際に店舗に商品を見に来る顧客も増えました。

オムニチャネルとは、実店舗とオンラインサイトが一体となり、顧客に購買の場を提供すると共に消費者の購買行動のデータを取得するものです。鯉徳のオンラインショップから店舗への流れも、「店舗ではアクセスの難しかった顧客層へのアプローチ」や、「デジタルだけではなく、実際に見て触れて購入を決めたい顧客への対応」等の面で、まさにオムニチャネルの活用例と言えます。

プロモーションや広告宣伝の強化

当社の以前のPR活動は、新聞の折り込みチラシでした。コストをかけチラシの配布エリアを増やすことで、新規顧客の開拓に取り組んでいました。しかしながら、現在のオンラインでは、追加のコストなしに、日本中または海外顧客へのアプローチも可能になっています。

また、チラシでは記載できる情報量に制約があり、一般的で概要的な案内になってしまうと考えられます。一方、オンラインショップでは、当社の強みである職人とのコラボレーションによる開発ストーリーや、加藤さんの日本のものづくりの良さを伝えたいという想いを画像や動画と共に充分な文字数を使って伝えることができます。

その結果、プロモーションのターゲットが、これまでの「子供を持つ近隣住人」から、「質の高い雛人形や五月人形を購入したい、あるいは日本の伝統工芸に興味がある人」とより具体的になります。ターゲット像を具体化できると、顧客のニーズをより具体的に分析・検証できるため、プロモーション活動の質や効果が高まります。より深いレベルで顧客にニーズに答えることで、当社のファンが増えることも期待できます。

加藤さんは、「夏休みの子たちを呼んで、伝統工芸の技術が学べるワークショップを開催したい」と語ります。オンラインショップや実店舗を通じて当社の想いに共感する顧客に、新しいサービスを提供し続けることで、当社のビジネスを支えるファンとの絆を強くしていけると考えられます。

購買行動の土俵にあがるために

同サイト内で、支援者である中小企業診断士の高見さんは、「消費者がインターネットでメニューや評判を調べるという購買行動に変わってきており、ホームページや紹介サイト、ECサイトがないと購買行動の土俵にも上がれない状態になってしまう」と語ります。

業種業態により変化のスピードに違いはあり、また既存顧客との良好な関係を維持するためには、従来どおりの方法を継続せざるを得ないケースも多いかと思いますしかしながら、市場の大きな成長が望みにくい中で、持続的に当社のビジネスを拡大していくためには、新規顧客の獲得や新しいマーケットへのアプローチが不可欠であり、鯉徳の取り組みは非常に参考になると考えられます。

株式会社鯉徳の導入事例は、YouTubeでも動画が紹介されていますので、ぜひご覧ください。

参考文献

デジタルマーケティングの教科書、東洋経済新聞社、牧田幸裕 著

中小機構総合ハンドブック26頁、ここからアプリhttps://www.smrj.go.jp/ebook/smrj_totalhandbook_2020/book.pdf#page=28

タイトルとURLをコピーしました