「ファクトフルネス」を読みました

デジタル化

あけましておめでとうございます。和多田です。

旧年は、いろいろ大変な年ではありましたが、今年は少しでも明るくなってくれたらよいなと願っています。本年も、皆様にお役に立つような情報を提供できるよう努力してまいりますので、湘南診断士ネットのホームページを、よろしくお願い致します。

さて、お正月中は、少し時間があったので、2020年のベストセラーであったビジネス書「ファクトフルネス」を読んでみました。たくさんの受賞歴があったことと、湘南診断士ネットのデジタルマーケティング分科会を主宰している身としては、表紙の「10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しくみる習慣」というキャッチコピーに惹かれたからです。

  • 書名:FACTFULNESS(ファクトフルネス)
  • 著者:ハンス・ロスリング、オーラ・ロスリング、アンナ・ロスリング・ロンランド
  • 訳者:上杉 周作、関 美和
  • 出版:日経BP
日経BP SHOP|FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣
愛されて、【5冠】達成!・2020年間ベストセラー【1位】(ビジネス書、トーハン調べ)・オリコン年間BOOKランキング2020 ジャンル別「ビジネス書」【1位】・読者が選ぶビジネス書グランプリ2020

読む前は、正直に言いますと、少しうがった先入観を持っていました。つまり、「何やら頭の良い人が、データに振り回される愚かな人に、上から目線で説教を垂れる…」という内容なのではないかと。しかし、内容は全く異なり、非常にポジティブで、明るい希望を持たせてくれるような、読後が清々しい本でした

この記事では10の思い込みについて一つ一つ挙げていくことは致しません。実際に本書を読んでいただく方が良いですし、もうすでにたくさんの方が書評記事やブログをインターネット公開しておりますのでそちらにお譲りし、ここでは、本書を読んで得た私自身の感想・気づきなどを書いてみたいと思います

チンパンジー以下と判定される衝撃

本書では、著者が冒頭で、13問のクイズを出題します。例えば、「現在、低所得国に暮らす女子の何割が、初等教育を修了するでしょう?」といった内容で、それぞれ3択の回答が用意されています。

3択なので、チンパンジーでも(ランダムに回答すれば)確率的には4~5問正解できるはずです。しかし、著者はこれまで、同じクイズを、知識人や学生等に出題してきましたが、ことごとくチンパンジー以下の正答率であったということです。世界を背負って立つ人間がチンパンジー以下という状況は、ケシカラン!と警鐘を鳴らすに至ったわけです。

実際、私自身もクイズに取り組んでみましたが、恥ずかしながら正解できたのは、13問中たったの1問でした。しかも、その1問というのは、著者が用意した、ある意味サービス問題(グローバルな気候の専門家は、これからの100年で、地球の平均気温はどうなると考えているでしょう?)でした。

種明かしをすると、それぞれのクイズは、悲観的(あるいは西洋中心的)な選択肢を選ぶと不正解となってしまいます知識や学歴がある人ほど、その傾向が強いということでした。また、その悲観的な選択肢は、確かに30年ほど前には「正解」ではあったものの、現在では、状況はずっと改善されています。しかし、多くの人の知識がアップデートされていないため、「不正解」を選んでしまうのです

なぜアップデートされないかというと、著者によれば、多くの人は「ドラマチックすぎる世界の見方」にとらわれやすく、多くの「すでに良くなっていること」に気づかなくなってしまうことが原因だといいます。唯一、最後のクイズだけ、正答率が高いのは、温暖化問題がうまく世界に浸透している良い傾向の例だというわけです。

のっけから見事に著者の策略にはまり、チンパンジー以下とは…なにくそ!と思って読み進めるに至りました。

※チンパンジークイズは以下のサイトで挑戦できます。

『ファクトフルネス(FACTFULNESS)』チンパンジークイズ
世界の事実にまつわる12の質問にチャレンジ

「可能主義者」でありたい

著者は自身のことを「可能主義者(著者の造語)」と呼んでいます。可能主義者とは、根拠のない希望を持たず(楽観主義者とは異なる)、根拠のない不安を持たず、いかなる時も「ドラマチックすぎる世界の見方」を持たない人とのことです。

著者は「人類のこれまでの進歩を見れば、さらなる進歩は可能なはずだ」と考えます。しかし、多くの人は、著者の言う10の思い込みの一つ「ネガティブ本能」によって、「世界はどんどん悪くなっている」「何をやっても無駄だ」「人類に未来はない」と錯覚してしまいます。しかし、実際には世界がどんどん良くなっていることを示すデータはたくさんあるのです。大事なことは、「人間は、そういったネガティブ本能を生まれつき持っている」ということを自覚し、ことあるごとに自身がネガティブ思考に陥っていないかを点検することだと思います。

ふと、自身(中小企業診断士)のことを振り返ると、いろいろあてはまることは多いなと感じました。例えば、B/Sや、P/Lの表面上の数値だけをみて、「これは難しいでしょう」「無理でしょう」と、否定的・悲観的なことばかりを言っていないか?あるいは、中小企業だから、できてもこの程度でしょう。というような、可能性を見限るようなクセがないか?ということです。

もちろん問題点と向き合うことも重要ですが、一方で良いことを見つけたり、チャレンジングな提案をすることは、悪いところを見つけたり、無難な提案をすることより何倍も難しいと思います。だからこそ、ネガティブに陥りやすいところをなんとかポジティブに持っていくことにこそ、中小企業診断士の存在意義があるのだろうと思いなおし、自身への戒めとしました。

他者を責めない

著者は、10の思い込みの一つ「犯人捜し本能」により、人間は、問題が起こっていることを誰かのせいにしがちだと言います。例えば、我々が悲観的な思考に陥るのは、悲観的なニュースばかりを流すマスコミのせいだ!といった具合です。しかし、犯人捜しを始めた途端、思考停止に陥り、結局問題が解決しないことも多々あり、この「犯人捜し本能」に気づき、抑えることが大切であると説きます。

私は、個人的には、「他者を責めない姿勢」こそが、この本が多くの人に読まれるに至った最大の理由ではないかと思います

本書は、一見、著者が人々に「思い込みを捨てて現実を見なさい!」と諭す内容なので、誰もが読みたくならないようなタイプの本です。なぜなら、問題点を指摘されて改善を促されることは、大抵は誰にとっても耳が痛く、また、もし責を問われるようなことがあれば、反発したくなるからです。実際、例えば、環境活動家が大きな声を上げて、温暖化問題の対策に取り組もうと呼びかけても、それがCO2排出量が多い後進国や、腰の重い政治家を悪者にするアプローチであるために、なかなか各国が一枚岩で取り組むというところまでは、到達できていない現状があることは、多くの人が知るところです。

一方、著者は、「思い込みが生じるのは人間の本能なので仕方がない」と割り切り、「しかし、それに気づき、認め合い、抑えることが大事である」というアプローチをとっています。このような、悪者を作らない姿勢から、「この人は、耳の痛い話もするけれど、本当に人類全体を愛し、人類の可能性を信じているのだな」と強い共感を得ることができたのだと思います。

中小企業診断士も、しばしばクライアントに耳が痛い内容を提言しなければならないときがあります。しかし、そんな時に、この著者のアプローチを思い出し、「この人は、耳の痛いことも言うけれど、会社の可能性を信じてくれているのだな」と思われるような態度で、クライアントと接したいものだと思いました。

失敗談も赤裸々に

これは、10の思い込みとは直接関係ないのですが、著者は自分の成功談だけでなく、失敗談も引き合いに出しています。例えば、彼が公衆衛生の医者として、モザンビークに滞在していた際、自身の判断ミスから、結果的に人の命が奪ってしまうという悲しい体験をしました。そのことを、彼は35年間も他人に話すことができなかったそうです。

大きな仕事をなし終えた元経営者が、自身の成功談を(少々の脚色も加えながら)武勇伝風に語るビジネス書等は、数多く見かけますが、読み終わった後に「なんだかなぁ…」という読後感で、結局なにもメッセージが頭に残らないということがあります

著者は、余命いくばくもないことを宣告されてから、本書を書き始め、上梓を見ることなく亡くなってしまいましたが、最後の最後に、自身も語りたくないようなつらい失敗談をもってでも、後世に残る者にメッセージを伝えたいという強い意志を感じ、また説得力もあると感じました

仮説のひらめきは現場から

著者は、「数字やデータを見ることは大事だが、それがすべてではない」と言います。数字やデータは仮説を裏付けるためには必要ですが、そもそもその仮説がどこから来るかといえば、やはり人と話したり、話を聞いたり、観察したりすることによって得られるといいます。日本風に言えば「現場主義」となるでしょうか?

最近は、ビッグデータなどといわれ、データ分析の中からインサイト(洞察)や、アイデア・ひらめきを得るということが大きな潮流となっていますが、一方で、現場を観察し、人と話をしたりすることはいわば車輪の両輪で、こちらが不要になるということは今後もないと思われます。

データも見ず、現場にも足を運ばず、自分の勘や経験だけに頼って意思決定することは問題外ですが、データ・現場、どちらかに偏りすぎてもダメだということは、肝に銘じておかなくてはならないと感じました。

奇しくもコロナ禍との一致

著者は、心配すべき5つのグローバルリスクとして、①感染症の世界的な流行、②金融危機、③世界大戦、④地球温暖化、⑤極度の貧困を挙げています。①は、筆者の実際に体験した、エボラ出血熱との闘いがベースになっているかと思いますが(先述した通り、彼は元公衆衛生のエキスパートです)、奇しくも昨年は、コロナウイルスのパンデミックにより世界が混乱した一年となり、著者の言説が、にわかに予言めいた感じを受けたことが、この本が多く読まれるようになったもう一つの理由ではないかと思いました。

昨年の初めごろは、トイレットペーパーやマスクの買い占め騒動、コロナウイルスはタダの風邪と主張する人が現れたり、ロックダウンをするべきか、すべきでないのかの論争があったり、まさに人々のファクトフルネスが試された一年であったと思います

同様に、米中の貿易戦争とまで言われた貿易摩擦は、次の世界大戦の到来を予感させてもおかしくないような事件です。人々の不安を掻き立てるような状況が続いています

これらの問題は、まだ現在進行中であり、早々に総括を出すべきものではありませんが、私たちにできることは、やはり、ファクトフルネスを活用し、不必要に情報に踊らされることなく、冷静に判断することだと思います。

そのためには、後述するように、自ら信頼できるデータにアクセスし、自分なりの考えを持てるようにすることが大切です。

もっと公的データを活用しよう

著者が、本書を書き上げるにあたって使用したデータや予測の多くは、国連などが発信している公的データで、いわば誰でも活用できるものであり、これを生かすも殺すも、我々自身であるのだと改めて感じました。

近年は、インターネットを通じてあらゆる情報が、早く安く手に入るため、つい誰かの言説に安易に乗っかってしまいがちですが、誰かの言説は、その誰かの考え方のバイアスがかかっており、知らず知らずに考え方を曲げられてしまっている可能性があります

私たちの身の回りには、あまり活用されていないだけで、有効に使える公的データが、たくさんあります。例えば、総務省統計局には、国が行っている統計に関するデータへのリンクが数多く載っています。

こうしたデータは、いざダウンロードしても、相応のスキルと知識がなければ、自力で読み解いていくことは、なかなかに難しいです。一方で、まだ誰の考え方のバイアスもかかっていない、いわば手あかのついていない生のデータということになります。

以下は私の推測となりますが、著者が読者に期待していることは、まずは、10の思い込みを捨て、本当に信頼に足る言説を取捨選択できる力をつけること、そして、究極的には、自ら手あかのついていないデータを手に入れ、読み解き、自分なりの考えを持てるようにすることではないかと思います。

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